商品を安く売ってはダメです…。
商品を安く売るのではなくて、価値を売るのです…。
同じ商品をできるだけ高く売る方法…。
このような間違ったことを指導している、とんでもない人たちがたくさんいます。少し言葉が汚いですが、これくらい言わないと間違っていることに気がつかないので、あえて汚い言葉を使いました。
こんな妙なコンサルタントのせいで、真実というものがまったく見えなくなってきています。そしてそのせいで、経営やビジネスを根本から間違え、失敗してまう人がどんどん増えてしまっているのです。
そこで今回の記事では、「商品を安く売ってはダメ!」という考えが、どうして間違いなのかということと、じゃあいったい何が正しいのかということについて解説したいと思います。
この解説を読めば、正しい世の中の動きが分かるうえ、あなたが今後も、妙なコンサルタントにだまされないような考え方を得ることができます。
世の中の動きが分かり、間違ったことを信じないようになると、成功する確率が高くなるのは当然のことなのです。
それでは内容の方に入っていきましょう。
「商品を安く売ってはダメ!」というのは本当か?
「商品を安く売ってはダメ!」 「同じ商品をできるだけ高く売る」 「安く売るのではなく価値を売ろう!」
このようなことが世の中で言われていますが、果たしてこれは本当のことなのでしょうか?
このような主張をするコンサルタントというのは、「価格を下げて売ったら荒利益高が取れずに苦しむから、値段は下げてはいけない」などと言います。確かにこれは一部は正しいのですが、一部は間違いなのです。
では、この言葉の中で正しいところはどこかというと、”価格を下げて売ったら、荒利益高が取れずに苦しむ” というところです。当然のことですが、これはこのとおりなのです。
しかし、間違っているのが、次のところです。
「値段を下げてはいけない」
この言葉こそが、完全な間違いなのです。
そもそもこの国では、安く売ることに対して良いイメージを持つ人はあまり多くいません。特に、妙なコンサルタントやそれに毒された経営者には、その傾向が強いのです。
「安売りはダメだ!」や「安物を売るな!」などと本気で思っているのです。
じゃあ、ここであなたに1つ質問しましょう。
あなたは、値段を下げている企業や安売りをしている大手企業が、みずから好き好んで商品を安く売っていると思いますか? 「安く売っている企業は、安く売りたいから安く売っているのだ」などと、本当に思っているのですか?
そんなはずがありません。
値段を下げない方が荒利益高を取れるので、「値段を下げない方がいい」ということや「安売りをしない方がいい」ということは、当然分かっているのです。そんなことは当たり前のことです。
つまり誰一人として、「値段を下げて、荒利益高が下がった方がいい!」などと思っている人などいないということです。
では、「安売りしない方がいい」と分かっているはずなのに、いったいどうして値段を下げたり、安売りをしたりすると思いますか?
「安く売れば、荒利益高が減るからよくない。」と分かっているのに、いったいどうしてわざわざ荒利益高が減るようなことをしていると思いますか?
その答えは簡単です。そうしないと売れないからです。商品の値段を下げたり、低価格で売らなければ、商品が売れないからなのです。
商品を安く売っている企業の中で「安く売りたい!」と思っている企業など、どこを探してもありません。できることなら、「少しでも高く売りたい!」と思っているのです。
しかし、安く売らないと売れないから、安く売っているのです。つまり、今の時代は「安くしなければモノが売れない」という時代になっているのです。
その証拠に、日本で伸びている企業を見てみてください。安い商品を売っているところこそが伸びている企業です。
たとえば現在、日本で一番売れているアパレル企業はどこかと言うと、ユニクロやジーユーを運営するファーストリテイリングです。
ここはどのような商品を売っていますか? 簡単に言えば、安いアパレル商品ですよね。
また、日本で二番目に売れているアパレル企業はどこかというと、しまむらです。もちろんここも、安いアパレル商品を売っているのです。
世界的な規模で見てみてもこれは同じことです。2013年の世界アパレル企業の売上高、第1位から第10位まで見ていきましょう。
アパレル世界順位第1位〜第10位(2013)
どうでしょうか? この中に、高い商品を売っている企業がありますか? 世界のアパレル企業の、第1位から第10位までのすべての企業が、安いアパレル商品を扱っています。
少し前までは、高いアパレル商品を売るアバクロが第10位に入っていましたが、それももう入っていません。もちろんこの数字は変わりますが、入ったとしても高いアパレル商品を売るのはアバクロだけなのです。
この数字こそが、安い商品が売れているという証拠です。売上が高いということは、お客がそれを必要として買ったわけだから、その数字を見ることによってお客のニーズを知ることができるのです。
つまり、お客のニーズとは、「商品は安いほうがいい!」というニーズなのです。
こうやって数字を見たうえで論理的に考えれば、「安い商品を売るべきだ!」ということが分かるはずなのに、なぜか妙なコンサルタントの口車に乗せられて、安い商品を売らずに、商品とは直接関係のないものを使って高い商品を売りつけようとするのです。
でも、そんなもので売れるわけがありません。なぜなら、それはお客のニーズとはまったく反対のものだからです。
お客のニーズというものは、あなたが何かのテクニックを使ってすぐに変わるようなものではありません。もっと、強固なモノなのです。だって、たった30円安いだけで、隣町まで自転車をこいで行くくらいですよ。お客というのは、相当は根性が入っているのです。
ただ、このことは逆に考えれば、お客のニーズをつかむことができれば、隣の町からでもわざわざ自転車をこいで来てくれるということなのです。
しかし、そのニーズを無視して、あの手この手のテクニックを使って、自分の売りたい商品を、自分の売りたい価格で売っているところにはお客は来ません。なぜならそこには、ニーズを満たしてくれるモノがないのですから。
だからこそ、あなたの扱っている商品をどうにか売りつけることを考えるのではなくて、お客のニーズに応えるような商品(価格を含める)を扱うようにするべきなのです。
お客のニーズが「商品は安いほうがいい!」ということなら、安く売るのです。これに別の価値を付けて売るなどということをしても売れるわけがありません。
ニーズに応えるということは、たったこれだけのことなのです。これさえできれば、自然と売上は上がっていくものなのです。何も難しいことはありません。
でも、価格を下げたら、荒利益高が下がるから苦しむでしょ?
今、解説してきたように言うと、「でも、価格を下げたら荒利益高が下がるから苦しむでしょ? そうすると、価格は下げない方がいいんじゃないの?」と言う人がいます。
しかしこれは違います。明らかに間違っています。そもそもの話ですが、価格を下げない時点で売れないのです。高い価格で売っている限り、その時点で売れないから、荒利益高が下がるどころか、荒利益高が発生することさえしないのです。
言っている意味が分かりますか?
ここで大事なことを1つ解説しておきますが、荒利益高というものは売れた時にはじめて発生するものです。売れなかったら荒利益高は0円です。
それなのに、以下のようなことを言う人が非常に多いのです。
「この商品は10,000円で仕入れて20,000円の売価を付けてるから、荒利益高は10,000円だ。」
ぜんぜん違います。ぜんぜん間違っています。確かに売れれば、荒利益高は10,000円です。でも、売れなければ荒利益高は0円なのです。売れなければ、荒利益高というもの自体が発生することはありません。
10,000円で仕入れて20,000円で販売すれば、予定の荒利益高は10,000円です。でも、その値段ならお客は高くて買ってくれないので、実質の荒利益高は0円なのです。
もし、この商品を15,000円で売ってみてください。もちろんお客が欲しい商品であることが大前提ですが、値段を下げれば商品は売れますから。そして、5,000円の荒利益高になるのです。
つまり、こういうことです。
「20,000円の価格をつけ、予定の荒利益高が10,000円で、まったく売れずに実質の荒利益高が0円か、値下げをして15,000円の価格をつけて売れ、実質の荒利益高を5,000円ゲットするのとどちらがいいのですか?」
これを見ればわかるように、値下げした方がいいですよね。0円と5,000円なのですから値下げした方がいいのです。
もちろん、何でもかんでも無駄に値下げするべきだと言っているのではありません。すべての商品やサービスが値下げをしなければならないということではありません。「本当は安くしたら売れるのに、安くもせずに他のテクニックで売ろうとするから売れないのです。」と言っているのです。
お客にとっても会社にとっても、いつの時代においても、ビジネスの主役は商品です。そして価格というものは、その主役である商品を買う時の、最も重要な判断基準の1つなのです。
そのもっとも重要な価格については何も変更せずに、他のどうでもいい売るテクニックを磨いても、売れるはずがありません。
お客にとって大事なのは、売り方や接客などではなく、以下の2点になります。
- どのような商品を、
- いくらなら買えるか?
だから、この商品と価格という2点を変えない限り、売れるようになることはないのです。
たとえテクニックで売れたとしても、そのようなもので振り回されるのは、ほんの一部のお客だけです。大多数のお客は、そんなテクニックで商品を買うようにはなりません。
だから、「商品を安く売ってはダメだ!」という意見はあほだと言っているのです。同じ商品なら、間違いなく安い商品の方が売れるから安く売るべきなのです。
「安く売りたいけど、赤字になるから安く売れないんです。」
以上のように解説すると、「安く売りたいけど、そんなことしたら赤字になるから、安く売れないんです!」という言い訳がでてきます。
しかしそれは、あなたが安く売る技術を知らないだけです。安く売っても利益が出る方法をあなたが知らないだけなのです。自分が安く売る技術を知らない、もしくは安く売っても利益が出る方法を知らないから、安く売ることができないだけなのです。
それなのに、あなた自身の勉強不足を棚に上げて、価格を下げずにテクニックで売ろうとしているのは、いったいどういう了見をしているのですか?
そのようなことをやっているからこそ、お客から支持されずに売れないのです。お客のことは考えずに「どうすれば売れるか?」という妙なテクニックを使って売ることしか考えていないから、売れないのです。
そんなテクニックを学ぶことなど経営努力とは言いません。
本当の経営努力というのは、商品と価格を見ただけで、ついついお客が買ってしまうものを提供するための勉強をし、調査をし、実行していくことを言うのです。
あなたはこれまで、本当の経営努力をしてきましたか? 自分が扱っている商品を「どうやったら売れるか?」ということばかり考えてきていませんか?
そんなものは嘘ものの経営です。その考え方を持っている時点で、お客の立場に立っていない証明なので、ビジネスで成功することは非常にむずかしくなるのです。
最後に…
商品を安く売ってはダメです…。商品を安く売るのではなくて、価値を売るのです…。同じ商品をできるだけ高く売る方法…。
これらの言葉というのは一見すると、気持ちの良い言葉であったり、経営者であるあなた自身のニーズを満たしてくれる言葉であったりします。
しかし、だからといってこれらは、お客のニーズを満たせるような言葉ではありません。
お客のニーズとは関係のないことを学んでも、ビジネスが成功するはずがありません。ニーズとは関係のないことを学んで成功できる方がおかしいのです。
しかし、これは逆に考えれば、お客のニーズと関係のあることを学べば、ビジネスは成功するということです。
はっきり言って、世の中では「お客のために!」と口では言っておきながら、「自分が扱っている商品をどう売るか?」しか考えていない経営者が多すぎます。
「いや、違う!お客のことを考えている!」と言っても、実際の行動が ”お客のために” を実現していなければ、お客のためを考えているとは言えません。
あなたはお客のために、あなたの売りたい商品を扱うのではなくて、お客の欲しい商品を扱っていますか? あなたはお客が買いやすいために、あなたが売りたい値段ではなくて、お客が買える値段で売っていますか?
それをせずに、小手先のテクニックを使い、価格は高くして売り込むというのは、「お客のため」を考えているとは絶対に言えません。「お客が買いたいと思っていない商品を買わせる技術」などという訳の分からないことを学ばないでください。
こんな妙なことを学んできたからこそ、なかなか成果が出ないのです。完全に間違いを学んできたからこそ、成果ができないのです。
あなたが本物の経営者になりたいなら、もっとまっとうなものを学んで成果を出すべきなのです。
もしお客が、「できるだけ安く商品を買いたい!」を思っているのであれば、それを何とかして高く売る方法を考えるのではなく、安く売ってもちゃんと利益が取れるオペレーションや仕組みを作り、安く提供することの方がお客のためになります。
「安く売ってはダメだ!」という論理は、お客の論理ではなく、売る立場であるあなただけの論理です。売上は、いつ、どんな場合でも、お客が持ってくるものだという認識をもう一度してください。